Shirotama's Blog「ひつじのぼんぼり」

指輪ホテル新作「あんなに愛しあったのに」に寄せて。瀬戸内国際芸術祭参加作品

愛した人もいたし、愛してくれた人もいたけれど、愛しあった人はいないの。と、女たちは言う。


しかしすでに、女たちは、この世に生まれ落ちる前に「愛しあう」ことを体験していたのだった。

そしてそれはひどく過酷なおそろしい時間だった。

女たちは「愛しあう」ことを体験してからこの世に生まれた。

前の世では、むごたらしくも愛しあう日々が続き、疲れ果て、力尽き、この世にひとりぼっちで生まれた。

愛しあった片割れのことなど、忘れたまま。


カレルは、海辺の洞窟に住んでいる。波と一緒にいちにち踊っている。

ルンバでもタンゴでもおなじ踊りのカレル。カレルが吠えると、海の鳥が降り立つ。

ルッタは、家に火を放ち、そこから500マイル泳いで溺れて、海辺にうちあげられた。

ルッタはカレルのタオルにくるまれた。何日かぶりの朝ご飯をぜんぶ食いらげた。

カレルとルッタはもうひとりの女をみつけた。

海に腰までつかり、右手をあげ「ヘイ!タクシー!」と叫んでいるタンジェであった。

この海辺での生活はきっと楽しくなるにちがいない。

生活のために必要な物を手に入れよう。鍋。釜。ミシン。ひきだし。物干し台。


前の世の忘れ去られた記憶は、女たちと過ごすことで、ねじまがりこんがらがって

やけに甘く切なく懐かしい思い出に焼き上がり、そして匂い立ち、蘇ってくる。

あんなに愛しあったのに。


One Comment

  1. shiron より:

    コメントテスト。
    コメントってこんなふうに表示されるのか。
    わかりった。

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